1973年11月、私家版として刊行された前田義則の第1歌集。写真は三池炭鉱労働組合。
歌集「坑道」は、私の最初のささやかな歌集である。この歌集には、昭和四十三年から四十八年まで「新日本歌人」その他に発表した作品のなかから二〇二首を選んでおさめることにした。
歌集発刊にあたって、作品にはさらに推敲をくわえ、配列は制作年代にとらわれず、テーマを中心にまとめた。
今年は、三池炭鉱三川鉱の炭塵爆発で、死者四五八名、一酸化(CO)中毒症患者八○○名をこえる大災害をひきおこした昭和三十八年からかぞえて十年にあたる。
爆発当時、大牟田を離れ、作歌を中断していた私は、再び作歌活動をはじめると、三川鉱大災害は、どうしても歌わなければならない素材として、念頭を離れることはなかった。
私は、当時の状況を、取材し、一首一首作品化していった。そして、これら一連の作品「爆発」は、本年度「新日本歌人協会」のコンクール賞を授賞した。
私は、三川鉱大災害十周年をむかえるにあたって、炭鉱労働者と家族の生活と生命を守るたたかいをうたってきた作品を中心に、歌集の出版を思いたち、炭鉱労働者、家族、遺族、CO患者が、困難なたたかいのなかで、未来への展望を見失わず奮闘している有様を、短歌作品を通じて、歌人、短歌愛好者、さらに、幅びろい働く人々に訴え、共感と支持を得たいと考えた。
もとより、作品成果のうえでは菲才、未熟な私であるが、炭鉱に働く人々の生活実態が多少ともあらわれていれは幸いである。
(「あとがき」より)
目次
歌集「坑道」によせて 碓田のぼる
序 岩本宗二郎
- 坑道
- 汗
- 断章
- 落盤
- 日照雨
- 抗議デモ
- 島原
- 冬の賦
- 身辺唱
- 仕繰夫の死
- 新春
- 日常吟
- 黴の花
- 禅院
- 党に拠るとき
- ピケにたつ
- 分裂
- 連帯の旗
- 歳月
- 赤間宮
- 手術台
- 病床日録
- 梅雨くらく
- 研修の街
- 小さき倖
- 爆発
- 港周辺
- 復職
- 朝の食卓
- CO患者
あとがき