1984年4月、海風社から刊行された高良勉(1949~)の第2詩集。装幀は粟津謙太郎。南島叢書16。第7回山之口貘賞受賞作品。著者は沖縄島島尻郡玉城村生まれ、刊行時の住所は島尻郡豊見城村。著者本名は高嶺朝誠。
第一詩集『夢の起源』から五年たった。ふりかえってみると『夢の起源』の巻頭は「喜屋武岬」で始まり、「辺戸岬」という詩で終っていた。
この五年間、北は奄美大島から南は与那国島まで、何度となく島めぐりをやってきた。五十余の琉球弧の島々の素顔と人々の暮しに接したかった。これをぼくは「琉球弧巡礼の旅」と名付けている。一年に一、二ヵ所ぐらいの島に行くのがせいいっぱいだから、全部の島々を巡るのにあと何年かかるだろうか。
島々に渡った時、いつも「岬」が気にかかった。なぜか岬はぼくを引き憑けた。いくつもの姿を持ち、伝説や物語を持つ岬たち。
詩を書き始めた頃、一生に一冊でいいから自分の詩集を持てればいいと思っていた。ところが今回、二冊目の詩集ができることになった。お金に余裕がないぼくには第二詩集は当分のあいだ出せないと思っていた。しかし、幸いにも海風社の作井満氏と琉球大学の関根賢司氏が出版の企画を仕掛けて下さった。思いがけない、ありがたい話であった。
ぼくが作品をまとめ始めると、詩友の水納あきら氏や山口恒治氏が様々な相談にのって下さり、あしみね・えいいち氏や川満信一氏、中原晋氏が激励して下さった。多くの先輩や同人誌の仲間、友人の厚情がなければ、ここまで長く書き続ける事はできなかっただろうと思う。
末尾になってしまったが、いつも遠くで見守って下さっている黒田喜夫氏や中平卓馬氏、そして、帯文を書いていただいた阿部岩夫氏に感謝申し上げたい。
ぼくのわがままの第一の犠牲者である家族をはじめ、多くの方々の御支援と海風社の御好意があって、この第二詩集『岬』は産まれた。みなさん、ほんとうにありがとう。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 岬
- 夢の黙示
- たたく
- 目は
- 岩
- 鬼面(バーントー)
- ㄑば(蒲葵)
- 風水の神
Ⅱ
- 父
- 二月告知
- 五月潜行
- 心音
- 誕生
- 命名
Ⅲ
あとがき