1983年11月、花神社から刊行された岸本マチ子(1934~)の第4詩集。装幀は高麗隆彦。第17回小熊秀雄賞受賞作品。
いぜん紅葉を血のしたたるような色だと、思った事があった。故郷(ふるさと)の山の紅葉は美しい。全山燃えあがるような凄絶さに触れて、気も狂わんばかりに山を駈けめぐった昔を思うと、今でも血が騒ぐ。
絢爛華麗の底に猛々しいエネルギーを秘めたあの色は、確かに人を狂わす何かがあるような気がしてならない。だが、歳月の曲折の中で風化に耐え、人間があざやかな紅葉になるにはどうしたらいいだろうと、わたしはいま考えている。(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 標本
- 春
- コザ 中の町ブルース
- 雨乞い
- 飢餓
- 水
- 夢
- ほおずき
Ⅱ
- 南よりの風晴れ
- モノレール沿線
- 踊る
- 坂
- 阿波人形浄瑠璃
- 夢
- 北の方角
- 川遊び
あとがき