2014年7月、現代短歌社から刊行された楠誓英(1983~)の第1歌集。付録栞は、沖ななも「薄闇のむこうに」、外塚喬「影と光と」。
これが私の第一歌集になります。この文を書いている現在、ちょうど三十一歳になったばかりですので、歌集のほとんどは二十代の歌ということになります。今見てみると、拙く甘い歌も多くありますが、二十代の軌跡として残すことにしました。
歌を詠むことで、自分が知らず知らずに抱えていたものに自ずと向き合うことになりました。時には、向き合いたくない事柄もありました。しかし、短歌を通して自分を見つめることで、抱えていた荷物がふっと軽くなる瞬間があります。それは、私にとって心地の良い貴重な瞬間なのです。短歌を止めずに続けてきた理由は、その瞬間にあると思います。
また、短歌を通して、大先輩から自分より若い人まで様々な世代の方と出遇うことができました。これは、結社で学ぶことの最大の利点であると思います。このことは自分にとって大きく、短歌を通して、人間的に育てて頂いていることに気づかされました。
(「あとがき」より)
目次
- 葉風
- 椅子
- 淡青
- 兄に似た少年
- 父の鞄
- ドアの向かう
- ゴンドラの夢
- 影の少年
- 青貝
- 傾いた自転車
- 街はづれの図書館
- ダビデ
- 父のコート
- 猫の帽子
- 給水塔の影
- 蝶の鱗粉
- 楷の樹
- 音無川
- 海底の死者
- 青き夜
- 冷凍ネズミ
- 海中他界
- トルストイ
- 細き雨
- 棺の跡
- 腋窩
- 父の椅子
- 片耳
- 冬の池
- 地獄の影
- 頭上に低く
- 古本屋の午後
- 金魚の墓
- 夜の校舎
- 深夜の街
- 海の水
- 轢かれた獣
- ルーン
- 冷水機
- 水葬
- 水底
- 青き蛇
跋 常磐井猷麿
あとがき