1974年11月、永田書房から刊行された高柳重信(1923~1983)の第1評論集。
敗戦直後の混乱の中で、僕が初期の評論を盛んに書いていた頃から、すでに二十数年の歳月が過ぎていった。この間、さまざまに変化する俳壇の状況に応じて、そのつど、書き捨て同様にしてきた文章も、おのずから相当の分量になったようである。
たまたま、この一冊に纏めるにあたり、いまは遠い過去になってしまった時代をふくめて、そのときどきの俳壇の状況と、それに鋭敏に反応した僕自身の心の動きが、いくつかの文章によって相互に補足しあうかたちで、多少なりとも鮮明に復原されることを期待したため、その選択が、ある限られた三つの時期に集中する結果となった。
しかし、これが僕の一部であり、且つは全部でもあることは、充分に確かであろう。なぜなら、二十歳を幾つも出なかった頃から現在まで、僕自身、どれほども変わってはいないと思われるからである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 敗北の詩―新興俳句生活派・社会派へ―
- 偽前衛派―或いは亜流について―
- バベルの塔―或いは俳句と人間性について―
- 掌篇俗論集
- 密書ごっこ
- 大宮伯爵の俳句即生活
- 続偽前衛派
- 藤田源五郎への手紙
- 病人の言葉
- 身をそらす虹の絶巓処刑台
- 蕗子誕生
- 「書き」つつ「見る」行為
Ⅱ
Ⅲ
- 『天の狼』の富沢赤黄男
- 飯田蛇笏の世界
- 阿波野青畝小論
- 放哉と山頭火
- 松本たかし小論
あとがき