1979年8月、思潮社から刊行された北川透(1935~)の評論集。写真は森山大道(1938~)、装幀は三嶋典東(1948~2012)。
本書は、【現代詩手帖】一九七六年四月号から、一九七九年四月号まで、三年間二十回にわたって断続的に連載した「詩と批評の闇渠(同時代覚書)」の後半の十篇に、次の三篇を加えたものである。
(1)吉増剛造覚書のIの部分=現代詩文庫『吉増剛造詩集』の〈作品論〉として書いたもの。
(2)吉増剛造覚書のⅡの部分=吉増剛造詩集『草書で書かれた、川』の〈書評〉として書いたもの。
(3)佐々木幹郎覚書のIの部分=佐々木幹郎詩集『死者の鞭』の〈解説〉として書いたもの。
この連載評論の前半は、すでに『詩的火線(同時代覚書・上)』として、上梓されている。それに収録した「菅谷規矩雄覚書」のIの部分、「岡井隆覚書」の二篇と、今回の右記三篇は、それぞれの〈初出一覧〉を参照していただければ明らかなように、かなり早い時期に書かれたものを含んでいる。それらは、当然。連載がもっている叙述の時間的な流れを断ち切り、異和となっているはずであるが、それと同時に、やはり、〈同時代覚書〉としてのモティーフとも深くかかわっているからという理由で、あえてここに組み入れることにしたのである。(「後記」より)
目次
- 存在・奈落・運命……・桶谷秀昭覚書
- 血と鉄の交わるあたり ・村上一郎覚書
- 現実体感力の狐独 ・秋山清覚書
- 〈夢〉の方法あるいは〈現在〉時の難関 ・黒田喜夫覚書
- 死児の哺乳あるいは形而上的下痢 ・吉岡実覚書
- 匿されているものの痛い破片 ・入沢康夫覚書
- 異貌の旅 ・吉増剛造覚書
- エテロトピー構造の変容 ・天沢退二郎覚書
- 壊滅しつつある根拠 ・佐々木幹郎覚書
- 〈地方〉の契機 世界を拒む異和の中心 ・米村敏人、藤吉秀彦、古賀忠昭覚書
- 「その時 きみに出会った」 批評論へ向けたメモ風の総括
後記