1975年11月、無限から刊行された井田真木子の第1詩集。装幀は星野勝成。
神の日課という題は、インド最古の文学であるといわれるリグ・ヴェーダからヒントを得てつけたものです。リグ・ヴェーダの神々にはそれぞれに捧げられた歌があり、その歌によって各々の神の姿は歴史を一瞬にしてとびこえる力を得るといえるでしょう。
リグ・ヴェーダに限らず種々の神話や、日常に密着してつくられた儀式に付随する辞や歌は、前述の様な歴史を透徹させる力をもつと同時に、ある同じ強い情感によって貫ぬかれていると思われます。二年ほど前から、その情感が何であるかという疑問は私をとらえて離しませんでした。その情感は古代の辞にだけではなく、極く最近の詩人の詩や小説にさえみつける事が出来ました。それは日常、自分が経験し慣れている喜怒哀楽の四つの感情と根本を同じくしながらも、はるかにそれを超越し、強いていえば怒り以上の怒り、喜びの感知され得る領域を脱した喜びということが出来、これを換言すれば、未だ人間の中で発掘し尽されていない未知の感情ともいえると思います。私は無数の散乱した言葉や物を、この情感を焦点にして一つのたちあがった情景にするという事を処女詩集を編むにあたって試みてみました。
(「あとがき」より)
目次
- 気息 Ⅰ
- Ⅱ
- Ⅲ
- Ⅳ
- Ⅴ
- Ⅵ
- Ⅶ
- Ⅷ
- Ⅸ
- Ⅹ
- ⅩⅠ
- ⅩⅡ
- ⅩⅢ
- ⅩⅣ
- ⅩⅤ
- ⅩⅥ
- ⅩⅦ
- ⅩⅧ
- ⅩⅨ
- ⅩⅩ
- ⅩⅩⅠ
- ⅩⅩⅡ
- ⅩⅩⅢ
- ⅩⅩⅣ
- ⅩⅩⅤ
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あとがき