夢の中での日常 島尾敏雄

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 1956年9月、現代社から刊行された島尾敏雄(1917~1986)の短編小説集。装幀は勝呂忠。第1回戦ご文学賞受賞作品。

 

 この短篇群は人間の夢の部分についての研究と言えなくもないですが、その手法ははなはだしく私小説的です。私はこれらの短篇に自分でもっと期待を持っていたはずなのに、今度よみ返してみて、その表現の窮屈な様子に驚いた。これはまるで夏の電灯にしたいよった蛾の屍体の堆積と言えましょう。私は今これらの短篇群を人ごとのようにしかみることができない。こんなことを書いたのかしらと思うようなことが多いのです。多くのことをどんどん忘れた。こんなふうなものをもう書こうとは思わない。しかし私がもし過去の作品群の中からいくつかを自分のものとしてさし出すことを要求されたら、或いはこの短篇集の中のいくつか、例えば「孤島夢」、例えば「アスファルトと蜘蛛の子ら」を挙げることこなるでしょう。それは苦痛である。私は自分の表現を見つけようとして塁々たる死骸を築いた。その死骸を向こうして白日の下に置こうとするのは、たじろがずに進みたいから、からか?さて読者はこの未完成作品群をいったいどのようによんでくれるのか。
(「あとがき」より 

 
目次

孤島夢
摩天楼
石像歩き出す
夢の中での日常
勾配のあるラビリンス
鎮魂記
アスファルトと蜘蛛の子ら
宿定め

亀甲の裂け目
月暈
大鋏
死人の訪れ
坂道の途上で
鬼剝げ
むかで
川流れ
肝の小さいままに

あとがき


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