青春物語・その時代と人間像 立野信之

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 1962年1月、河出書房新社から刊行された立野信之(1903~1971)による自伝的プロレタリア文学史。

 

 「青春物語」はいわばプロレタリア文学運動の側面史で、前半の部分は「小説新潮」(昭和三十六年四月―十二月)に「青春時代」と題して連載され、後半は昭和二十六年頃、「文芸」(河出書房発行)に「小林多喜二――その時代と人間の映像」と題して発表したものである。こんど一本にまとめるに当って、ずいぶん加筆訂正したが、しかし人間の記憶はとかく曖昧なものだから、なお思い違いや間違いがないとも限らない。それに関係者は、すでに物故した小林多喜二や徳永直らを除いては大部分のものが現存していて、いずれもみな本名で登場してしゃべったり、行動したりしている。おれはそんなことを言った覚えはない、といわれる向きもあろう。何よりも一番怖れるのは、筆者の記述がその人の人格を傷つけるようなことがありはしないか、という点である。ずいぶん気をつけて書いたつもりであるが、万一そうした結果が生じた場合は、筆者の思い違いか至らなさで、その点はふかくお詫び申し上げるよりほかはない。
 「徳永直――その離婚と破局と死」は、「別冊小説新潮」(昭和三十五年八月)に発表したもので、いわば徳永直における人間研究である。だが、晩年の徳永を書いたものを「青春物語」と一緒にするのはどうか、と思われたが、徳永も「青春物語」に出てくるし、小林多喜二とはブロレタリア文学の双璧であるから、当時の側面史を語るには、小林ととも多くの頁を割く必要がある。その意味合いから、一緒に収録した。ここでもまた関係者の叱正を乞う次第である。
(「あとがき」より)

 

 


目次

・青春物語―その時代と人間像―

・徳永直―その離婚と破局と死―


あとがき


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