2018年10月、書肆山田から刊行された青山雨子(1961~)の第8詩集。カバーオブジェは井坂奈津子。装幀は亜令。著者は福井県武生市(現越前市)生まれ。
一九九九年に初めて韓国を旅行した時、高速道路のパーキングエリアで日本の巻きずしにそっくりの食べ物を見た。見ているだけではおられず、思わず買って食べてみたら、まず海苔が違った。なんと油の味がするのである。
それから具にハムが入っていた。そればかりでない日本の沢庵に似た黄色い漬物が入っていた。――肝心の干瓢が入っていたかは、思い出せないのだが。最初に考えたのは、巻きずしはどっちが先だろう?ということだった。
金沢に住んていた頃、朴さんという朝鮮の友人がいた。両親は焼き肉店を経営しており、彼女は福井の朝鮮学校を卒業したと言っていた。
その彼女の店で生まれて初めて朝鮮の冷麺を食べた。梨を入れるのよ。梨がない時期はリンゴになるけど。と言っていたことが鮮やかに蘇る。そして、冷麺は一年中食べると言うのだ。不思議な気持ちのまま、この麺はどういう種類の穀物かしらと訊いたら、少し考えたあとで、日本にはないものだわね。と答えた。その彼女と二十年近く会っていない。
(「あとがき」より)
目次
- めし
- 爪
- 半島
- 凪
- 山椒
- カラス
- ロード
- 花瓶
- 天井の灯り
- 空気统
- 長い廊下
- 味
- 小麦粉と米
- ゆでたまご
- バナナ
- ダメ
- 冷麺