1962年4月、鉄道弘報社から刊行された足立巻一(1913~1985)の第2詩集。写真は、有馬茂純、石川忠行、入江宏太郎、川本五一、山內一夫、著者。著者は東京生まれ、刊行時の住所は神戸市須磨区。
この詩集は、わたしの第二詩集にあたり、一九五九年から六一年までの三年間の作品を集めた。わたしが『夕刊流星号』とよぶ地方新聞社に注いだ情熱と理想をうしない、旅行をおもな仕事にするようになってからの、旅行中に書きとめた作品ばかりだ。だが、ここには固有の地名はいっさいあらわれていない。すべて心象の地誌である。
フォトは、仕事でいっしょに旅行した友人の作品を、ずいぶんかってに切り取ったものである。どれも気に入ったわたし自身のオブジェだ。しかし、それ以外に詩作品とは特別な関係はなにも持っていないものである。
また、わたしに最初に旅行の機会を与え、この詩集を公刊してくださった鉄道弘報社、旅行の機会を与えてくれた『トラベルグラフ』誌、関西電力『ひらけゆく電気』発行所、近畿日本鉄道、毎日放送、大阪テレビフィルム、日本宣伝株式会社の関係スタッフにふかい感謝をささげる。それから、いつもるす番をしてくれたなくなった母、妻とこどもにも。詩集を出すことは、にがく、むなしく、やりきれないものだけれど、それも非才が生きるうえには、多少必要な行為だと、わたしは永年思いこんでいる。
(「あとがき」より)
目次
- スパイ旅行
- 裏がわのちいさな半島
- 死んだ踊り
- ワナ
- 怪物
- 川にさらされた野獣の家族
- 漁港の空
- スサノオの川
- 荒野
- 火薬
- 伝承と肖像
- 農村工業
- 七十五年
- 斜坑について
- 自然の質量について
- 沈む話
- 墓
- うずくまった巨人
- 石
- 石をたずねる旅
- 石のおわり
あとがき