1929年7月、改造社から刊行された室生犀星(1889~1962)の自選短篇集。
「童子」は大正十一年九月の作である。「童子」から「幾代の場合」迄七年間の作品を集編したものが此の「新選室生犀星集」である。自分はこれらの作品を訂正し且つ補遺を試みようと企てたが、それは原文を全然作り變へるより外に添削のしやうの無いものである。原文を全然作り變へ縱橫に朱筆を加へることは、小説作者として何等後代に對うて「過去」を語るべきものではない。自分は加筆の餘地無き過去の作品に對しては故意に其儘に集編した。
これらの作集の中に自ら自分の生活が壓流してゐることも、集編の後に初めて小説に僞りは無いと思うたのである。同時に穉拙の思ひ出もまた深い。(著者)
目次
- 童子
- 後の日の童子
- 嘆き
- わが世
- わがこと人のこと
- 人生
- 押し花
- 笛吹く人
- 聖觀音圖
- 九谷庄一
- 喬生と金蓮
- 芋掘藤五郞
- 魚になつた興義
- 秋本の母
- お龍夫人
- 姉妹
- 朝子
- 母
- 造り花
- 花輪をおくる
- 田舍暮し
- 山河老ゆる
- 身邊
- 或女の一日
- 忘春述懷
- 露及の手記
- 妻が里
- 妹
- 彼女
- 野田山
- 暮笛庵の賣立
- 名園の燒跡
- あら磯
- 遺稿「メリイ・ゴオランド」
- 七時牛
- 神も知らない
- 木枯
- 古風な寫眞
- 山吹
- イワンの聖人
- 天龍寺にて
- 冬の蝶
- 手袋
- 死と彼女ら
- 觀音院
- 山のほとり
- 幾代の場合