2009年5月、思潮社から刊行された山田亮太の第1詩集。装幀は門倉未来(ままごと喫茶)。附録栞に「山田亮太の勝利」(瀬尾育夫)と「永遠に喪失してしまった帳面のうえを川が流れてしまってから」(和合亮一)収録。
初めて詩を書いたのは十四歳のころで、毎朝なぜか午前四時に起床し、起きるなりすぐにノートとペンを取り出し、とにかくできるだけ短い時間でノート1ページを埋め尽くそうと言葉を書き殴る、そうすることで眠っている頭を叩き起こす、という画期的な目覚まし法を実践していた。
そのときのノートは十七歳のころにほかの雑多な文書とともに橋の上から川に投げ捨てられた。燃やす、切り刻む、知らないやつの下駄箱に入れておくなど、自らの過去が刻印された文書を抹消するための方法はほかにもいろいろ考えられたが、結果的に採用されたのは、もっとも簡単で確実な、突発的に実行して気づいたときには取り返しのつかない種類のやり方なのだった。惜しいことをした。あのノートに書かれた言葉たちをもう二度と誰も読むことはないのだ。
だからこの本の中の言葉は、川に流されることもなく、未来に残ることのできた幸運な言葉だ。一〇〇年くらいは残るだろうか。それはわからない。一〇〇年残ったとして読む人はいるのだろうか。それもわからない。わからないがしかし、少なくともいくらかの人々のからだの中に、この本の中の言葉たちは残り、そのからだから別の場所へ言葉たちは出て行くのではないか。本当のことを言えばそれもわからないのだが、そう信じるし、そう信じていなければ、いまやどんな詩を書くことも、書かれたものを公開することもできないだろう。
(「あとがき」より)
目次
- エコシステム
- 雪だるま三兄弟
- 色彩
- ポチたち
- 火
- アミリイ
- 猫
- 双子の誕生
- 伝説
- カエル
- 手紙
- おやすみなさい
- 背の高いお父さん
- 動く
- ジャイアントフィールド
- ぺぺの物語
- 特別な踊り
- 最後