1989年12月、砂子屋書房から刊行された原子朗の詩集。装画・装幀は平野充。
近年の「歎語」連作中から変化を眼目にして「抄」とした。
もともと、自分の書いた詩を「詩集」にまとめるということに、私はそれほど執着をもっていない。まして洪水のように詩集が出ている昨今、詩集を出すことに一種のうしろめたさ、罪悪感さえないではない。詩は書くが詩集の一冊もない詩人がいても、少しもおかしくないどころか珍重にあたいする、と私は考えている。なぜなら、すでに何度か書いたことだが、私の場合、活字になった詩は私の詩の燃えかす、消し炭であるという自覚はつづいていて、たとえ未完成でおわってもいい、書いているときが私には詩である、と思っているからである。
(「あとがき」より)
目次
- 詩の歎語
- いのちがけの歎語
- 正月の歎語
- 二月の歎語
- 雛まつりの歎語
- 卯の花の歎語
- 留守居の歎語
- 端午の歎語
- 六月の歎語
- 花花の歎語
- 真夏の歎語
- 北回帰線の歎語
- 九月の歎語
- 長江の歎語
- 洛陽の歎語
- すもも採りの歎語
- 芦溝橋の歎語
- 中国への歎語
- 師走の歎語
- 新しい出船の歎語
あとがき