1955年4月、昭森社から刊行された乾直恵の第3詩集。装幀は北園克衛。
この詩集に収めた詩は、いずれも、昭和十一年から昭和二十七年頃までの作品の中から自選したものである。おおむね私の視野にうつった現実的な色彩のものを主にして編んだ。さきに私は「肋骨と蝶」(昭和七年)「花卉」(昭和十年)の二冊の小詩集を出したきり、今日まで他に何も出さなかったから、憶えばこの詩集は、まさに十六、七年ぶりのものである。詩を忘れていたのではないが、その機会がなかなか到来しなかったのである。傾向などからみても、あるいは「花卉」につづく詩集というよりは、寧ろ、そのもう一つ後につながるべき詩集であるかも知れない。「花卉」のすぐ後に来ると思われる作品は、後日また折をみて、別な一本に纏めて置き度いと思っている。
詩の配列は、大体、制作年代の逆順にした。またかって「旧かなづかい」で書いて発表した詩も、この際「新かなづかい」に改めて統一して置いた。
私は一昨年来病床にあるので、この詩集の出版にあたっては、特に、旧友野田宇太郎、蒲池歓一両氏の厚い友情と昭森社主森谷均氏の好意をうけた。誠に有難いことである。なお、北園克喬氏からは装画をいただいた。これまた真に有難いことであった。
(「あとがき」より)
目次
運河の町
- 運河の町
- 彼
- 再会
- 雪の日
- 展望
- 春の猫
- 一家
- 水煙の涯
- 晩秋
- 運河の岸
- 箱舟
燈下
- 祈禱
- 養魚池のある風景
- 市
- 村
- 燈下
- 杭の上
- 静かなる転移
- 美しい声
- 村景図
- 夕暮
母を喪う
- 終焉
- 土
- 秋風
- 齢
- 雑草譜
- 陽炎
- 荒蕪地にて
- 太陽
- 神
- 秋の虹
- 梢
- 陽炎
あとがき