1982年7月、私家版として刊行された市橋隆之助の第2詩集。
昨年詩集「冬の鳥」の発刊にあたり、三十年前の詩稿に目をとおしましたとき、当時を思いうかべてはるかな感動を覚えました。
そしてこれを動機に、これまで数々の動乱の世代に生きてきた心の軌跡を残しておきたいと思いました。
今回の詩集「虹のかけ橋」は昭和四十年代から昭和五十年代までの作品を主体に自選したものであります。
「冬の鳥」に収録しました作品の年次から考えますと、長い沈黙の断層をはさんでの作品でして、残念ながらその間の気魄の落差もはげしく、思考の低迷にも失意を抱かざるをえませんが、捨てがたい詩心の流露をのこしたい思いで上梓しました。
今、わたくしの人生は、春ののぞめない冬の季節です。枯がらしの吹きすさぶ中にせきたてられる思いでこの詩集の纏めを急ぎました。
この貧しい一冊が、あなたの目のとどく書斎の片隅に置いていただけたら、そしてこの中の詩のどれかが、ほんのひとときでも、お心にとめていただけるものがあるとするならば、それは望外のよろこびであります。
燃えさかる蝋燭の火のともるあいだ、健在のつづくかぎり、謙虚に詩への執心に励みたいと思っております。
(「あとがき」より)
目次
- 春のあしおと
- ふるさとの川
- 時雨のたより
- 望郷
- 菖蒲の日
- ふるさと
- 銀いろの道
- 虹のかけ橋
- 老いたる母
- あの地の人へ
- 空よ
- めぐみの花
- かりそめの出逢い
- 影
- 彼岸花
- 消えた小鳩
- 流れ星
- さよならの人
- 離別の空に
- 花のねがい
- 雪解け
- ひとりごと
- 心の糧を
- 視線
- 短い夏
- もがり笛
- 流転の星
- 花火
- 殘雪
- 暴風雨
- 土の器
- 落日
- ボンボン時計
- 風の盆
- たばこ
- くちなしの花
- 梅雨
- 晩夏
- 旅立ち
- 不毛の秋
- 落葉
- 余生
- 夜明け
- 秋の日記
- 悲願
- 履歴
- 遠い愛
- 子供
- 樂園
- 墨の流れ
- 遠足弁当
- 立春
- 花が散る
- 道づれ
- 青葉病
- 成人の門
- 左義長
- 年の瀬
- さりげなく
- 冬への道
- 忘却の花
- 放心
- 酒粕の匂い
あとがき