罌粟と記憶 パウル・ツェラン 飯吉光夫訳

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 1989年5月、静地社から刊行されたパウル・ツェラン(1920~1970)の訳詩集。翻訳は飯吉光夫(1935~)。

 

『罌粟(けし)と記憶 Mohn und Gedächtnis』は、一九五二年に出版されたパウル・ツェラン Paul Celan(一九二〇~七〇)の処女詩集である。この詩集には、一九四八年にウィーンのA・セクスル書店から出版された『骨壺からの砂』からの二十五篇も含まれるが、この限定処女詩集は当時の悪い出版・印刷事情を反映して誤植が多く、作者自身によって撤回されているので、この『罌粟と記憶」が、シェラン自身の意図においても処女詩集である。
 この詩集にはツェランを戦後随一のドイツ詩人として有名にした「死のフーガ」が含まれる。この詩は一見して明らかな通り、第二次大戦中のユダヤ強制収容所ありさまを内容にしている。伝記的事柄としては、ツェランは一九四二年の秋に父親を、そして四三年の冬までに母親をルーマニア・ブュヴィナ州の西方のユダヤ人収容所で失っている(彼はひとりっ子だった)。ツェラン自身は、ナチスに奉仕する強制労働に従事している。
 詩集全体は戦塵いまだ収まらぬ時期の嫋々とした苦痛の名残りと綿々とした悲哀の情緒にみたされている。『骨壺からの砂」が出された当時、ツェランはウィーンにいたという事情も反映されているかもしれない。
 ツェランがパリへ移ったのは一九四八年だが、一九五二年の春、彼は招かれていわゆる「四十七年グループ」の会に出席し、ここで朗読した自作の詩が、同席していたシュトゥトガルトの出版社ドィッチェ・フェアラークスアンシュタルトの代表者の心を動かすことになった。詩集『罌粟と記憶』は同年の秋、同社から出版されている。
(「訳者あとがき」より) 

 


目次

・骨壺からの砂

  • 砂漠の中の歌
  • 夜ごと
  • 君は窓に
  • マリアンネ
  • 獣脂のろうそく
  • 手のひらに
  • 半夜
  • 海のかなたの君の髪
  • 白楊(はこやなぎ)
  • 灰草(サイネリ)
  • 歯朶(しだ)の秘密
  • 骨壷からの砂
  • 最後の旗
  • 鉄の靴の
  • 饗宴
  • 九月の黒い目
  • 海からの石
  • フランスの想い出
  • 物蔭の女の唄(シャンソン
  • 夜の光線
  • 君から僕への歳月
  • 遙かなるものの賛美
  • 一生
  • 遅く、深く
  • 光冠(コロナ)

・死のフーガ
・逆光

  • 旅の途上
  • エジプトで
  • 霧笛の中へ
  • みずからの眼をいまも探しつづけている
  • あなたやすべての鳩のように
  • 烙印
  • 夜に、心臓をおのが胸からひきちぎりとる者は
  • 結晶
  • 経かたびら
  • 沖合で
  • 僕はひとり
  • おやすみ
  • あなたは僕がまるで
  • 堅い櫓
  • 鳩たちのうちの最る白い一羽が

・夜の茎たち

  • 眠りと食事
  • 旅の伴侶
  • 神が僕に
  • 永遠
  • 波打ち際
  • 心臓や脳たちから
  • 蝋燭と
  • 彼女は自分の髪を
  • 君が言葉に眩惑されつつ
  • 風景
  • 静粛に!
  • 水と火
  • 巴旦杏を数えよ

訳者あとがき


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