沼へ 宮田澄子詩集

f:id:bookface:20211209074014j:plain

 1980年12月、不動工房から刊行された宮田澄(1930~)子の詩集。刊行時の著者の住所は三重県四日市市

 

 昨年偶然のことから、空襲の夜以来散り散りになっていた友人たちに再会した。話は尽きなかったが、私は子供のころから異様に覚めていたと言われ、思いあたることがあった。
 私には、三歳ころからの記憶が鮮明に残っている。冬の朝のひとり遊びの指先に止まった陽の柔らかさとか、強すぎる夏の陽に吐気を耐えた理由とかが。それらの中に存在した大人たちの、言葉や表情の動きが意味するものを、生きゆくための直感として幼児の私が了解していたのだろうか、と思う時、けなげというよりは怖ろしく思えるのだ。
 覚めていた幼児期以来、私はどれほどの成長をしたと言えるか。私を残して去り、今も去りつづける、身近な死、狂気。それらからの脱出のように、生きものの存在への限りない愛惜。私の生の不条理を問いつづけ、たぶん解決されぬまま果てるであろう未熟な混沌を、かけがえのない魂のように抱いて、覚醒と夢想のあいだに見え隠れするあの美しいもの、を頼って彷徨うのだろう。
(「あとがき」より)

 


目次

  • 沼へ 
  • 光景 
  • シライトソウ
  • 薬草採り 
  • 漁師
  • ひと
  • 願い
  • 月蝕 
  • 奈落 
  • 幻視 
  • 野良犬 
  • 夕ぐれ
  • 骨の音 
  • 気配のようなわたしの神よ 愛よ
  • たったひとりの観客のために 
  • 音の絵 
  • 賞状 
  • 辛夷 
  • 風景 
  • 眠り

 

跋文 平光善久 

あとがき 宮田澄子 

 

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索