1988年9月、近文社から刊行された梅崎義晴の第4詩集。刊行時の著者の住所は京都府八幡市。
私が生まれたのは、奈良県の古い町今井町の角地である。吉野から国道一六九号線をそのまま今井町に入ってくれば、私の生まれ育った家に辿り着く。
家の前は違い十字になっていて、南へ行けば畝傍山へ、北へ向かえば村々を通って、今、住む八幡へと辿り着く。私はその家のみせの奥で眠っていた。
通り過ぎる人の話、みせに入ってくる人の話、それらの話を聴きながら私は育った。
人にはそれぞれの世界がある。
その世界がお互いに交わりながら、何故か交わっていないのが不思議でならなかった。
それぞれの作品は、一九八四年からのもので、その都度、加筆してきた作品もあります。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 世界
- ラブ・ソング
- 背中にあるセンチメンタル
- 西瓜
- チューリップ畑
- とおい時間
- 大晦
- 時間逃亡者
- 哺乳動物の系譜
- かぼちゃの自立
- 天馬の孤独
Ⅱ
- 鼠の家
- 使者
- 竹
- 光
- 風
- 進化
- 野分
Ⅲ
- 門
- 水
- 血
- 網
- 石
- 車
- 錯覚
- 紫色信号
跋文 井上俊夫
あとがき