1969年2月、新樹社から刊行された井上由雄の第2詩集。
第一詩集「室生寺」を出してから四年になる。あれから書きためたものを纏めて一冊にする。
私にとって、一生懸命に生きることは、一生懸命に詩を書くことだということが、ときには堪えられなくなる苦悩の日があっても、私はそれを、さらに詩に訴える仕事をするしかない。
私の作品は「室生寺」の時代から何んの変化もしていないだろう。それを私は喜ぶでもなく歎くでもない。またそうあるべきだと信じている訳でもない。ただ瞬間瞬間に忠実だということが、長い時間になっても変っていないに過ぎない。
それにしても何時になっても詩とは不可解なものだと言うしかない。
詩も解らずに、私はそれを書きつづけている。
またこれからも書くだろう。
出版にあたり、福田恆存先生、新樹社の柚社長にひとかたならぬお世話になりました。
(「あとがき」より)
目次
- 花墓標
- 日記
- 気流
- 上昇運動
- 交点を力いっぱい支えながら
- あいだ
- 南へ向う
- 水仙の花
- 夏終る
- 壊滅の定理
- 長靴
- 凍土
- 間の問題
- 頂点で
- 創線
- 線の季節
- 創生期
- とりで
- 示向性について
- 累積
- 特急券
- 宴
- けいとう
- 小諸で
- 拒否
- 遊戯
- いのり
- 余白
- 無気温
- 雨の色
- 風
- 名人芸
- 工作
- 切開
- 風の中で
- シルエット
- 無風
- 点
- 円錐形
- 春と
- 女が一人でいるときに
- 音
- ユミの唄<七篇>
- 砂丘の人<二篇>
- 松江で<八篇>
- 標識
- 段々畑を登ってゆく時に
- 風来風音
- 白い投書
- 階段
- らんらん
- 構造図の分解
- 名なし草
- 目的のない詩
- 坊主と海
- 虚構壊滅
- 不連続
- 犯罪
- 音律のための色彩
- 信濃の馬糞
- 豚
- 花と万年筆
- 劇中劇
- 秋原
- スモッグの街で
- 枯葉たち
- 台風
- 奇術師
- 裸足
- 騒音
- あるフィナレー
- どじょう
- 採光
- 白い頁のために
- 太陽の下で
- 夏鶯
- 一つの終り
- 墓碑不明
- 台北
- 香港
- ふたり雪ん子
- 円形舞台
- 時計の責任
- 男鹿の吹雪
- 祈禱
- 早春大菩薩
- 野糞讚歌
- 葬列のある夜
- 鈴虫
- 酒と女
- 美談
- 無限小
- 秋の花譜
- 死体とカーネーション
- 季節感覚器と
- 花集
- 殺戮の試み
- 中村さんの心臓
- 図解のための試論
- 忘れるための記録
- 点景
- 女体文彫
- 異物誕生
- 宝石との対話
- 嗅覚の海
あとがき