1993年5月、日本基督教団出版局から刊行された塔和子(1929~2013)の詩集。装幀は熊谷博人。
私達、人間社会の中では、生存競争にしのぎをけずって傷つき疲よるべないことどもの中に、夫婦という至ってノーマルな人間関係があり、そこで互いにいたわりながら、また意見をのべ合いながら、愛しあい高められてゆき、羽を休めるべき暖かい家庭の中で子孫が誕生しながら生きつがれて来たのです。またその関係があったればこそ、豊かな人間性がはぐくまれてゆくものと思います。
ハンセン病療養所にある私達夫婦の日常は、「泡のように消えるものにかこまれながらなにをたのみにして在ったのか/あの確固たる思いは」と詩いましたように、泡沫のように消えてしまうものにかこまれていながら、いつも確かなものだと、何の不安も感じずに生きているのです。
この度は、そんな日常にくり広げられる、私達の日々の中で生まれ出た作品を一冊にして見ました。お読みいただけますれば幸いです。また、詩集出版の過程において、絶大なご尽力を賜りました川崎正明先生に、厚く御礼申し上げまして後記と致します。
(「後記」より)
目次
- 置かれている
- 突き出た抗
- 夫婦
- 日常
- いのちのシャボン玉
- ぼおっと明るんで
- 手
- 泡沫の中で
- 骨
- 外出
- 集めている
- 手の上にのせて
- 帰郷
- 晩秋
- 熱
- 旅
- 怒りの効用
- 愛しさ
- 無慙のあと
- 新居
- 距離
- 在る
- 昼の部屋で
- 主人
- 希望
- 身を細くして
- 湖のうた
- 緑色のしずくに
- 喜び
- 溜め息
- 再生
- 鳥籠からのメッセージ
- 確かさ
- 豊かさ
- 涙
- 風景
- いい調子
- 腹
- 性の重さ
- 空気
- 平和
後記