1985年11月、みすず書房から刊行された中井久夫(1934~2022)によるギリシャ詩のアンソロジー。
これは二〇世紀ギリシャの輝かしい大詩人たち数人の訳詩集である。コンスタンディノス・カヴァフィスが五六詩、ヤニス・リッツォスとオジッセアス・エリティスが共に二〇詩、ヨルゴス・セフェリスが一一詩、アンゲロス・シケリアノスが一詩。計百余詩である。
もとより、私は現代ギリシャ文学の隆盛に関心を持つけれども、現代ギリシャ文学の専門家では全然ない私がこれらの詩を訳したのは、現代ギリシャの詩だからでなくて、目下私の心をもっとも打つ優れた詩だからである。 その外の理由で、誰が精神科医の業余にこれらを訳するだろうか。
(「まえがき1」より)
目次
カヴァフィス
・一九一一年以前
- 壁 1896
- 祈り 1898
- 大いなる拒絶をなせし者…… 1901
- 窓 1903
- テルモピュレ 1903
- 野蛮人を待つ 1903
- 憧れ 1904
- 声 1904
- デメトリオス王 1906
- 単調 1908
- 足音 1909
- 「市」 1910
- 総督領 1910
- イオニア 1911
- 三月十五日 1911
- 神 アントニウスを見捨てたもう 1911
- イタカ 1911
- 愛希家 1912
- アレクサンドリアの王たち 1912
- 帰ってくれ 1912
- 教会にて 1912
- せめて出来るだけ 1913
- 店のためには 1913
- はるかな昔 1914
- 朝の海 1915
- しかし賢人はまさに起ころうとすることを認知する 1915
- テオドトス 1915
- オロフェルネス 1915
- マヌエル・コムニノス 1915
- 街路にて 1916
- イグナチオスの墓 1917
- 詩人アンモネス 六一〇年没、享年二九歳に 1917
- 彼等の神々の一柱 1917
- 宵闇 1917
- アチュルの月に 1917
- カイサリオン 1918
- 忘れるな、身体よ…… 1918
- ネロの生命線 1918
- 九時から 1918
- 午後の日射し 1919
- 船上にて 1919
- 亡霊たちを招く 1920
- ダレイオス大王 1920
- 名哲学者の学校出 1921
- 小アジアの田舎にて 1926
- さるギリシャ大植民地にて、紀元前二百年 1928
- 紀元前二百年 1931
・拾遺詩篇
- ユリアノスと神秘 1898
- 精神の成長のためには 1903
- 一九〇三年九月 1904
- 一九〇三年十二月 1904
- アントニウスの最後 1907
- 人知れぬもの 1908
- ギリシャより帰郷する 1914
- 亡命者たち 1914
- 半時間 1914
リッツォス
・『括弧』1946-47
- 単純性の意味
- 顔
- 夏
- いつの日か、おそらく
- 理解
- ミニチュア
- 三幅対
・『括弧』 1950-61
- 幼年時代――回復期
- 忘れられていた優しさ
・『証言』A、1963
- 孤独な業
・『証言』B、1966
- いつの日かの休日
- 見知らぬ部分
- 罪
- 屈伏
- 宵
- 軽やかさ
- 残骸
- 仕事を果たす
・『証言』C、1966-67
- 井戸のまわりで
・『タナグラの女たち』 1967
- 陶工
エリティス
・『定位』 1941
・『まず太陽』 1943
- その夜をもはや知らぬ……
- 夏の身体
- 艶やかな日、声のホラ貝……
- コリントの太陽を飲む……
- 私は愛する名に生きた……
- マルメロの林にたゆとう風……
- 日がな一日野を歩いた……
- 石と血と鉄とで……
セフェリス
・『転回点』 1931 より
- 愛の歌
・『ミシストレマ』 1935
- アルゴナウトの人たち
- 眠り
- もう少し先に行けば見えるよ……
・『練習帳』 1940
- 苛酷な瞬間と瞬間との……
- 海の洞の中には……
- 海を捜さなくていい……
- 栓をひねると出てくる温水は……
・『航海日誌一』 1940
・『航海日誌二』 1944
- カリグラフィー
・『航海日誌三』 1955
- 夢
シケリアノス
- パーン