2007年8月、無極堂から刊行された内田博(1909~1982)の詩集成。編集は阿部圭司。
詩人であった父・内田博が一九八二年に亡くなったとき、わたくしはその年譜を二、三年もすれば出せるものと考えていた。しかし、いざ調べ始めると分からぬことばかりで、たちまちにして頓挫した。おまけに貧乏暮らしもしていたから、本にするなどなおさらのことだった。幸いにもある絵本がよく売れてくれ、本の方はなんとか出せるようになった。すると生来のぼんやり者の自分がこしらえた年譜に悲しいほど自信がなくなってきた。どうすればいいのだろうか…。
わがぼんやりについてはあきらめることにした。正確を期すべき年譜をそんなことでいいのかと問われれば俯くしかないが、わたくしもそろそろの年齢になっている。出さぬよりいいと"決心"した。
息子が作る本である。どうしても甘くなる。そのことはなんとしても避けたかった。それで年譜をのぞき、すべてを詩友の阿部圭司にお願いした。阿部は「内田博全詩集』を出した青磁社の経営者であり、いまも無極堂を経営している。
あまり思わしくもないその体調にもかかわらず、仕事を成し遂げてくれた阿部に感謝するとともに、故秋山清のエッセイの収載をこころよく許してくださった秋山雁太郎氏にもお礼を申し上げる。年譜については多くの人たちのお力添えをいただいた。
(「しめくくりに/内田麟太郎」より)
目次
・「内田博全詩集」から 内田博詩撰集 選阿部圭司
- 夜の歌――歌会終って
- 夜の歌――友ひとり
- 夜の歌――濁り水面
- 夜の歌――雪女
- 三里船津
- 水
- 沼1
- 沼2
- 沼3
- 筑豊の冬
- 筑豊の雪
- 三池のこども
- 猫について
- 老母に
- 残酷物語
- 早春1
- 残雪
- うさぎ
- 金魚の歌
- 秋
- 蒼い風景
- 坑内 1000
・『内田博全詩集』から
- 「あとがき」として内田博君へ 秋山清
内田博さんのこと 阿部圭司
内田博年譜 文学系統図 作成 内田麟太郎
しめくくりに 内田麟太郎
著者略歴