1973年11月、朔社から刊行された南六郎(1909~?)の第3詩集。編集造本は蘭繁之(1920~2008)。
わたしを取り巻く、すべての存在は黒の季節でありました。わたしはこの季節を旅してきました。わたしの旅はわたし自身を探しにゆくことであり、またわたし自身を発くためであります。こうしてこれからも、わたしは生命のある限り裏通りから小路へと黒の季節の放浪を続けてゆくことでしょう。
この詩集は、過去三年間の作品の中から選んだもので、半分は青森県唯一の月刊詩誌「朔」に掲載したものであります。「朔」の発行者圓子哲雄氏や同人の方々に深く感謝申しあげます。
詩集の装丁は人間にとっての晴衣であるとはなにかで読んだ言葉ですが、従来のわたしの詩集は装丁その他すべてわつぃが勝手に作りましたが、しょせんその道の専門家にかなう筈はなく、そのまずしさに詩集自体さぞかし悲しんだことでしょう。こんどはじめて蘭繁之氏の友情と好意によって、氏の手により見事に晴衣を着せていただきました。(「あとがき」より)
目次
- キツネ
- 言葉が無ければ
- 孤独
- 牡蠣
- 生きる
- 飛騨便り
- 死(一)
- 死(二)
- 死(三)
- 不意に襲うもの
- 終着駅
- 隙間風
- 隔絶
- 誕生日
- 牢獄
- 死線
- 出稼ぎの冬
- ヒロシマ
- 幻想
- 植物人間
- あじさいの季節
- 競馬
- 貝
- 若者(一)
- 若者(二)
- 橋
- じょっぱり
- 農耕馬
- 春
- 憧憬
- 河の唄
- 旅
- 叡智
- 流刑人
- 帰巣
あとがき