コシャマインの末裔 上西晴治

 1979年10月、筑摩書房から刊行された上西晴治(1925~2009)の短編小説集。表紙は砂澤ビッキ(1931~1989)。北海道新聞文学賞受賞作品。

 

 この小説は、独立した四つの作品を一つにまとめあげたものだが、はじめ、「コシャマインの末裔」と題して、今の「オコシップの遺品」にあたる部分を書きあげたときには、これが四部作まで広がってゆくとは考えてもいなかった。それが、筑摩書房の柏原成光氏に書きつぐことをすすめられて、二部を書き、さらに三部へとつづけていって、ようやく四部「アイヌモシリ」まで書く結果となった。私としてはいわば初めて現代に正面から取り組んだわけで、身近なものほど客観視は難しく、また、まわりの壁にぶつかることも多く、筆が思うように進まなかった。その間、六年の歳月を費し、書き終ったときには、交換した手紙の山ができていた。
 「貧乏」と「民族差別」の問題は、二十数年間、わたしの追い求めてきたテーマである。それは、十勝川河口部落に生まれ育ったわたしの、子供のころからの思いなのである。このごろ、民族解放の声がいちだんと高まっているが、しかし呼び声とは反対にその底に根強い差別をひそませている。この執拗な人間性を、わたしはこれからもたしかめてゆきたい。
 なお、この小説に取りくんでいる間じゅう師の八木義徳先生には、「筆を休めてはいけない」と、つねに激励のことばをいただいた。
 また、友人の矢口以文・花崎皋平・江原光太の各氏からは資料を提供してもらい、砂澤ビッキ氏には版画を表紙に使わせていただいた。ここに厚くお礼を申しあげる。
(「あとがき」より)

 

目次

  • オコシップの遺品
  • ルイペの季節
  • トヨヒラ川
  • アイヌ・モシリ

あとがき


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