1985年9月、原詩人社から刊行された長嶋光三郎(1928~)の第2詩集。原詩人叢書11。著者は千葉県生まれ。刊行時の職業は冷暖房空調機の運転保守業務。住所は国立市北。
私にとって道祖神とは人生の道しるべであり、縄文以来先祖から受けつがれ生活の哲学のように思います。野辺の道祖をみつめているとそれらがわかってくるような気がして、前詩集『三角まなこ」を発行して以来、七年ぶりに道祖を基点とした詩集をまとめました。
天孫神話の道案内猿田彦とアメノウズメ等の話もありますが、これらは六~七世紀頃作られた天孫神話に組み込まれたものであり、これら神話の作られる何百年、いや何千年も前から道祖の和合信仰はあったと思います。
現在残っている道祖碑は江戸中期以後のものが多いようですが、教育大の民俗事典や飛鳥出土の道祖が示すように平安期に双体像や和合像が作られていた事が明らかです。
インドのヒンズー教寺院の男一対女三の交合像やカーマ・スートラに見る一対五の不平等の交合像は道祖双体像の示す対等の和合とは別の思想と思います。ジョルジュ・ベタイユはエロスの無い哲学は哲学ではないといっている。なるほどと共感しましたが、私は更にエロスをかくし、規制している宗教や哲学はやがて恐怖の迷路におちこむと思います。私は道祖と縄文に未来を見つめ、更に二集、三集を続けていきたいと思います。
(「あとがき」より)
目次
- 太陽のエロス
- 心の鏡
- 道しるべ
- 出口の御礼
- 迷路
- 諏訪四賀の神
- 塩尻 洗馬の神
- 敬意
- 塩尻 元町の神
- 対等の神
- 梓川 桃の双体神
- コミューンの心
- 人の道
- みのりの古代詞
- たねまき
- 芸道
- 道徳蛙
- 道をたずねる
- おりびな双神
- 火の花
- ドンドン焼き
- 大磯左儀長
- 江戸 亀戸の道祖神祭
- 飛鳥出土の古代道祖 道祖にまざった庚申
- 石神仏の受難
- ラスコーの壁画
- 天地の交合
- コノハナサクヤ姫
- オウゲツ姫
- 縄文のねがい
- 七千年戦争なしの縄文
- 縄文期出土の女男石
- 縄文の平和をうたぐる息子
- 縄文の絵文字
- アマゾンの農耕初源
- 古代エジプトの夫婦和合彫刻
- アフリカの女神
- 日本ザルの行動学
- 無神論という信仰
- 闘争文化
- 善意の恐怖
- 笑顔と殺意
- お墓の迷信
- コンプレックス
- 公共
- しずかな恐怖
- 王権
- 言葉の死
- 支配座
- 国家のイジメ
- イジメと戦争の原因
- 人生
- 草鞋と女神
- 乗りおくれた花びら
- 取材記 手作りの祭り信州三郷村
- 同 信州川上村
- 同 大磯道祖神(左儀長)
道祖神と私 山本照二
詩と道祖神 松橋光陽
道祖神との出合い 伊藤節子
あとがき 長島光三郎