2013年11月、思潮社から刊行された渡辺みえこ(1943~)の第7詩集。著者自幀。著者は深川生まれ、刊行時の住所は相模原市。
私は十代を失語状態のように過ごしたが、それは自分の生の言葉が見つからなかったということでもあったと思う。
二十五歳のころ嵯峨信之氏、石原吉郎氏が講師の詩学研究会に出会った。
三十代には父の会社が倒産し、一家離散、母の死、債権者に追われる、などさまざまなことがあり、生活のための仕事に追われ、詩作から離れていたこともあった。
表現は、絵や論文や、小説などで書(猫)いてきたが、詩は沈黙に一番近く、そして生きることにも近い。
書くことに逆襲され、返り血を浴びることもあったが、血や叫びや、生きることの中で消えてしまうものを、言葉ですくい取る、詩という形式は、何よりも、もう一つの生だった。
そしてまた多くの友人、書き手たちにも支えられてきた。
本詩集出版のためにご尽力くださった思潮社編集部の出本喬巳様に感謝いたします。
(「書くこと・生きること」より)
目次
Ⅰ 冬薔薇
- 母の井戸
- 谷底の家
- 森の吊り橋
- そんな夜明けには
- 北の海辺で
- 痕跡
- 名は
- 優曇華の花
- 陸宿借の鳴く夜には
- 冬薔薇
- 泣いている弟
- もうひとつの青空・鯉のぼり
- 剥製
- 約束の川
Ⅱ 象牙海岸
- 空の水没
- 月光
- 散骨
- 黄昏に歌うひと
- 相模大野 八時四三分 快速
- 花の咲き方
- 草原の青空
- 象牙海岸
- どうせ死ぬなら
- 火の色の顔の女
- その名の
- 鳳仙花
- どんな明け方
書くこと・生きること