1986年5月、宝文館出版から刊行された武田隆子(1909~2008)による深尾須磨子(1888~1974)の詩人論集。装幀はたけだとしこ。
深尾須磨子と私が逢う機会を得たのは、婦人運動家の新妻イトさんのご紹介に拠る。その後、何度かお目にかかっているうち、深尾さんは、「私の生存中に山田五十鈴さんに扮して貰うので私の伝記を書いてくれませんか。」と言われたが、劇に書けそうもなく、「深尾須磨子ノート」(一九六六年)という短かいものにさせてもらった。
このたび、宝文館出版からお話があったので、前著「深尾須磨子ノート」を書いたいきさつもあって、思い切って筆を執ることにした。執筆に当って、深尾須磨子生涯の膨大な作品のエキスともいうべき、深尾須磨子自身の選になる昭和四十五年刊の「深尾須磨子選集」三巻に私見を試みた。他に須磨子を知る上に重要と思う「むらさきの旅情」にも触れることにした。
深尾須磨子の年譜・思想・背景については駒場の近代文学館所蔵の資料に拠った。また『無限』三五号(昭和四九年刊・慶光院美沙子編集)の特集・深尾須磨子追悼号を参考ともした。須磨子は生前から自伝的なものを吐露しなかったが、須磨子選集の創作編には、至るところ経歴・経験を暗示するものがある。だが、私はそこから須磨子はこうであったと、大胆な推測を試みることは控えた。
(「はじめに」より)
目次
深尾須磨子著作目録
あとがき