1980年3月、新星図書出版から刊行された清田政信の評論集。
詩を書く者を批評へさしむける衝迫は何だろう、と今考えている。いろんな答えが予想されるけれども、私の場合、言葉の自家中毒におちいった内閉から自らを解き放ち、情況を現実として構成しようとする意志以外のなにものでもない。
思想の形成に(それが表現としてなされる限り)捷径などあり得ないとすれば、自らの内界に向き合い、その顕示された部分をてがかりにして現実を捉えるほかに方法はないと言うべきだろう。しかし批評といえども青春においては自然発生に依拠する部分が決して少なくないとすれば、風土の肉質に到達するにはいくばくかの歳月を要するわけだ。この一冊はそういう回り道をいとわず歩いた男のいつわらざる成果であり、貧しくとも一度きりの遭遇をもってなされた仕事だといいたい。
古いものは二十一歳から、新しいのは四十代までの文章の中から、沖縄に関するものを集めてまとめることにした。なかには収録をためらわせる未熟な文章もあったが、もう二度とこういう機会はないと思い全部おさめることにした。
今まで書いてきた批評の中から比較的長く、また持続したテーマで仕上げた文章は別に一冊としてまとめるつもりだが、ひとまずこの二冊で私の批評作品は全部網羅されると思う。
(「あとがき」より)
目次
序詩 辺塞の街
1
- 詩と体験の流域
- 変革のイメージ
- 生活者の幻影を拒む
- 扼殺の美学
- 詩人の生理
- 空間凝視
- 安谷屋正義論
- 城間喜宏論
2
- 意識と感性
- ひずみの視点
- 役割でないこと
- 波打ち際の論理
- 流浪とエロス
- 凝視の方法
- 書評五つと他一篇 伊良波盛男・仲地裕子・比嘉加津夫・神谷厚輝・新川明・豊平良雄
- 詩論の試み
- 暗いエネルギー
- 言葉の異次空間へ
- 土着の風化
- 情念の変革
3
- 古謡から詩へ 藤井貞和に触発されて
- 脆弱な論理 勝連敏男批判(1)
- 整合論理の虚妄 勝連敏男批判(2)
- 擬解釈派への批判 勝連敏男批判(3)
- 批評と自己表出 玉栄清良批判
- 秩序護持の虚偽 泉見享批判
- 文学研究家への批判 仲程昌徳へ
4
- 幻域
- 死地への道ゆき
- 感受性と思想
- 憎悪を超える仮構
- 感受性の変容
- 生活意識と上昇
- 帰還と脱出
あとがき