1991年12月、白地社から刊行された浅井美代子(1930~)の第1詩集。付録栞は中塚鞠子「三人で家族」、倉橋健一「いのちの初夜」。著者は大阪府千早赤阪村生れ、慢性関節リウマチによる身体障害者。刊行時の住所は岸和田市。
ちっぽけな一冊を出すことになりました。内容を考えれば冷汗が出ますが、ひよっとして未知の誰かと痛みを分け合えることができるかもしれない。一抹のそんな期待で目がくらんでの事です。まるで身内のような顔で居ついている病い(リウマチ)とは、誰とよりも近い付き合い。この宿病とべったり向き合うその位置をずらしたい。気分転換したいという思いが、或る日届いた回覧板にあった、地元の読書グループ「若葉」の参加案内に引き寄せられ、やがて市立図書館友の会の「詩の教室」参加へとつながりました。
こういう成りゆきで言葉を捜し始めて約十年。その言葉の不思議を知らされました。欲しいと思う言葉は逃げる。私の手になぞひっかからない。何しろあちら(言葉)は人類始まって以来、生命の始源から連綿と受け継がれて心と呼ばれるお城を築いている、変幻自在な存在ですから。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ幻想賦
- へんな旅
- その時
- あした晴よ
- 蜜泥棒が飛ぶ
- すっぽかされて
- 不通
- 病院は春
- 雪の舞う日
- 道
- 行く耳
- そのとき風は
- 気になる夢
- 夜がにげる
- 軽はずみのあと
- 森の中で
- 秋
- 楽しく食事
- 鳥
- 幻想
- とりあえず
Ⅱ生活賦
- 病いにキミと呼びかけて
- 病い
- ことばを紡ぐひとよ
- 平穏
- 早春
- 病よ ソイツと長いつき合いで
- 子守歌
- ひと休みしませんか
- ひとりあそび
- 時よ
- 雪はまーだ
- 待ってたように
- 挫折
- 落ちつきましょう
- おとずれ
- ダンボール箱
- おーい
- 風
- 冷凍庫
- あわてる
Ⅲ回想賦
- 同窓会に欠席
- 盛夏
- 思い出
- 陽の沈むまえ
- 思い出
- 晴れ間
- ある土曜日の午後
- 生きる
- 朝
- 海
- すばらしいエネルギー
- 薔薇の部屋
- 伝説のある里にきて
あとがき