今を生きるための現代詩 渡邊十絲子

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 2013年5月、講談社から「現代新書2209」として刊行された渡邊十絲子(1964~)による現代詩入門書。

 

 この本に書いたことは、ずっとこころに思いつづけてきたことです。
 第一章は、およそ四半世紀も前に、当時参加していた月刊の詩の同人誌「飾粽(かざりちまき)」に書いた文章がもとになっています。谷川俊太郎「生きる」は中学生には向かない詩だという話です。そのときはなんの反響もなく、わたしの考えはそれきり止まっていましたが、忘れたことはありませんでした。終章の四次元と余白の話は、今年になって「競艇マクール」の連載コラムにはじめて書きました。そのほかの章も、部分的には書評やコラムのなかで書いてきたことがもとになっています。わたしは稼業としてさまざまな種類の文章を書いているつもりでいましたが、そのうらがわで、じつはひとつのことばかり考えてきたのかもしれないと思います。
 新書のなかに長い詩を引用する、それも基本的に一篇まるごとを引く、というのは、なかなか度胸のいることでした。詩の批評や書評では、詩の一部分を引用するのがふつうで、まるごとは引きません。そのことにずっと違和感をおぼえてきたので、ここで実験をしたかったのです。
 詩は詩集におさめられたかたちのまま引用するのが礼儀ですが、今回はこの本自体が新書判なので、サイズの制約があります。改行位置が変わるのは詩によっては致命的なことにもなりかねず、できれば避けたいところですが、やむをえない場合は、思潮社の「現代詩文庫」シリーズ(二段組み)を参照しました。次善の策ですが、ご了解いただければ幸いです。

(「あとがき」より)

 

目次

  • 序章 現代詩はこわくない
  • 第1章 教科書のなかの詩 谷川俊太郎のことば
  • 第2章 わからなさの価値 黒田喜夫入沢康夫のことば
  • 第3章 日本語の詩の可能性 安東次男のことば
  • 第4章 たちあらわれる異郷 川田絢音のことば
  • 第5章 生を読みかえる 井坂洋子のことば
  • 終章 現代詩はおもしろい

あとがき

 

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