1961年5月、季節社から刊行された米田栄作(1908~2002)の第4詩集。装幀は小崎靖子。刊行時の著者の住所は、広島市翠町。
この二月、いささかの余暇を得ることが出来たので、とりあえず本詩集を編み、出版することにした。久しぶりに私自身を振り返り、静観の機会もほしいと思ったからである。
<<川よ、とわに美しく≫<<未来にまでうたう歌≫に続いて、本詩集も広島を題材にしたもので覆われ、頑なに繰り言ばかり反芻しているにすぎない。
それは私の執念かもしれない。その執念がまだ私に現代の詩を探り当てさせないのだろう。否、本詩集のごとき古い発想や類型のなかに、私はいつまでも埋れたままでいるのかもしれない。
それすらも生き残った私の愚痴であろう。愚痴と執念が入りまじり、未消化のかたまりが私の胸中を硬ばらせているようであるが、その症状を亢進させぬよう私の自覚すべき期でもあろう。
集中、<八月六日の奏鳴>は一九五五年から一九六〇年までの作、<広島曼陀羅>は一九五五年の作であり、この機会に二、三篇改題したものもある。
(「あとがき」より)
目次
・八月六日の奏鳴
- 八月六日の砂
- 無言歌
- 円錐の炎
- 一身抄
- 木枯し
- 道
- 火を噴く砂
- 過去帖十二冊
- 人間の砂
- 花だより
- 八月六日の声
- ネール・インド首相に
- 千羽鶴
- 烈日
- 自鳴鐘
- 新樹抄
- 沸騰の日に
- 記念樹の道
・広島曼陀羅
- 死と生の架け橋
- 平和の手形
- ラ・パンセ
- 鐘が鳴りわたるとも
- 幼なき花粉
- 路傍のみどり
- 地上の星
- わがまちの空
あとがき