醫者のゐる村 伊藤永之介

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 1942年5月、寶文館から刊行された伊藤永之介(1903~1959)の短編小説集。装幀は福田豊四郎。画像は裸本。

 

 ここに収めたのは、すべて昨年の後半期から今年にかけての作品である。出版上の都合で兎角舊作を加へることが多かつた自分としては、最近作ばかり集めることが出来たといふ意味で、この本には特に心ひかれるのがある。ただ、ラジオ放送に用ゐた「墓參り」と「龜田の久藏」の二篇のうち、前者だけは、放送にあたつて舊作に加筆したものであるが、小品ながらに自分としては愛着の深いるのであるし、且つ加筆によつてすつかり面目を新にしてるあるので、あらためて讀んで貰気になつた。
 ここで、この半歳の自分の仕事のあとを振り返つてみると、農村の保健問題を取扱つたもの、工場物、鑛山物、傳記物と、いろいろな方面に關心が向いてゐて、題材の上で兎角一色だつた自分の作品集としては、從來になく多様さを見せてゐる。これがこのまま發展していくかどうか、それは自分でもわからないが、何かの意味で、作家としての一つの道程を示してあるのかも知れない。
(「あとがき」より) 

 


目次

  • 醫者のゐる村
  • 肥料工場
  • 恙蟲病
  • 女醫者
  • 墓參り
  • カナリヤ
  • 汽車の半日
  • 龜田の久藏
  • その女たち

あとがき


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