
1968年8月、昭森社から刊行された谷澤辿(1931~1998?)の第2詩集。第9回中日詩賞次賞作品。
第一詩集を出してから九年の歳月が流れた。その間周囲は著しい変り方をした。
家のすぐ前を東海道新幹線が走り工場が出来コンクリートの住宅が建ち並んだ。それに反比例して夥しい林や田や畑が失われて行った。鮒は泳がなくなり五位鷺は飛来しなくなりほおかぶりをした純粋の百姓もいなくなってしまった。そして日々移りゆく微妙な季節感がデパートや商品の広告に鮮明になって行く現代の風潮からは「人生」という語感も失われて「生活」だけが充満している。
われわれの文明は既に血まで侵しつつあるのではないか?
倖いまだわが窓の外には五条の橋の欄干の珠のような葱坊主が見える。二町ばかり東には山椒の葉を食べてしまう山屋敷の老人も健在である。ここに九年間における自然と人生の記録を集めて一冊の詩集とする事の出来たのも倖いである。
集中〝姉"は前著「E夫人」より再録した。更に前著の如く再び森谷均氏の好意に預った。更に尚絶えず私を鞭韃してくれた人々に深い謝意を表する。
(「跋」より)
目次
Ⅰ
- 自叙伝
- 少年……
- 姉
- 七夕
- 音楽
- 概略・一九五四年
- 桑
- 山椒魚の故郷
- 踏絵
- 潮汲
Ⅱ
跋