
2009年11月、春秋社から刊行された正木ゆう子(1952~)によるアンソロジー句文集。装幀は笠原正隆、題字は著者。
本書は、二〇〇三年十一月から二〇〇八年一月まで、約四年間にわたって「週刊サンデー毎日」(毎日新聞社)に連載したコラム「一句悠々」をまとめたものである。毎回発行日に合わせた季語の句を選んでいたので、本書の中で季節がおよそ四回廻っている。
俳句に関わる喜びには二つの種類がある。
ひとつはもちろん自分で俳句を作る喜びである。俳句にしなければただ過ぎ去ってしまうばかりの日常を、一句一句かたちにして残すことのできる充実感は何ものにも代え難いし、また、人生の様々な局面において、常に俳句が身ほとりにあって自分を支えてくれる心強さを経験した人は多いだろう。
もうひとつは人の句に共感する喜びである。
俳句を始めたいという人がいるとき、私はまずこちらの方の喜びを強調することにしている。自分が作るのは二の次なのだ。人の句に共感し、感心し、ああ俳句っていいなあと思うことこそ、俳句の喜びの最も深いものであり、また有効な上達の道である。
だから私はそれぞれの人が愛唱句のノートを作ることをお勧めしたい。本書がその実例のひとつになればと思う。
連載は私の都合で予定より短く切り上げてしまったので、私のノートにもまだまだ多くの愛唱句のストックが残っている。この続きはまた機会を見つけて書くつもりである。
計画していたとおり、今年は四冊の本を春秋社から上梓することができた。六月に出た句集『夏至』に始まって、七月にはエッセイ集『十七音の履歴書』、自句の背景について書いた『ゆうきりんりん』、そしてこの『一句悠々』。
短い期間に、これだけの本を纏める機会を与えていただいた春秋社に感謝いたします。
(「あとがき」より)