1991年1月、れんが書房新社から刊行された小長谷清実(1936~)と宮園洋(1942~2001)の詩画集。
・「東京、あっちこち」の各パーツは、一九八〇年一月から一九八三年十二月にかけ、月刊「東京消防」誌に扉の詩として掲載された。合計四十八点。この時のさし絵も宮園洋氏のものであったが、本書でのイラストレーションとは別のものであった。一九九〇年になって、それらの四十八点から三十六点を取り出し、「東京、あっちこち」のタイトルで再構成をした。各パーツの改稿も若干した。あっちこち、を漢字で記せば彼方此方であり、彼岸此岸ということでも在る。(小長谷清実)
・共著者の小長谷清美さんとは、ぼくが思潮社という小さな出版者で、制作の仕事の修行時代からのつき合いである。堀川正美さんが肝煎といった感じで、小長谷さん(『希望の始まり』)と伊藤聚さん(『世界の終りのまえに』)の第一詩集を作ったときだった。
・東京から岡山に移って十三年目になる。この間毎月、東京―岡山の往還が続いている。移った年に、小学校に入学したばかりの長男・貴至が、不幸な事故であっちに行ってしまった。ぼくたち家族にとっては修正のきかない大きな落丁である。当時、『東京消防』誌の扉に詩を連作していた吉増剛造さんが、レクイエムを書いてくれた。それに絵を付けていたぼくは、息子の写真を貼り込んで私的な追悼号にしてしまったことがあった。この吉増さんのあと、小長谷さんと組んで連載したときの詩が本書の詩篇である。(宮園洋)(「あとがき」より)
目次
- プランターで
- うねうねと折れた狭い道を
- マンションの七階に住むそのひとの
- まどろみのなかへ
- 焼けあとに咲いた
- 大川の花火の音を
- ビールを飲みながら
- 六尺ふんどしをしめた
- 海から帰ってきたひとが
- 河骨とかいて コウホネと読む
- 走るタクシーの窓から
- 赤ん坊が生まれた
- ザクロの実を
- そのかみの美少女を
- 月見の寺の前を
- 書棚から書棚へ
- あれは秋川だったか
- 足袋問屋の娘と、大川へ行く
- 某月某日、高尾を訪う
- ネコのいない町なんか
- 運動会も先月終った
- 十二月に入ると
- 河豚の料理を食べに行く
- 除夜の鐘が鳴りだすころ
- 鬼が走る
- ずっと昔に親しかったひとから
- ウミネコの大群が
- 弁慶橋の階段を降りて
- おひなさまを食べにきませんか
- 車窓に 大きな高層団地の
- 梨の花が
- ツバメは なぜ
- スイミングセンターの前を通って
- 卯の花とはおからのことだけど
- 太鼓橋のまんなかにたたずみ
- カッコウの
あとがき