1977年9月、光風社書店から刊行された吉田静代(1891~1992)の回想記。装幀は難波淳郎。
この度和田芳恵先生御夫妻の思いもかけない御配慮により、つまらない昔話を本にして頂けることになりました。なるべく話し言葉にするつもりが、関西弁と違って東京ことばは活字になりにくく、中途はんぱに終ってしまいました。
常夏が存命なら八十九、私は八十七で、ずいぶんたくさんの方のお世話にあずかりました。若い時は平気で受けたその一つ一つに、改めて胸のつまる思いがいたします。先年九十の賀を迎えられ土岐善麿先生は、その間一度もお目にかかっていませんのに、すぐ六十数年前の常夏を思い出して下さいました。
紙数が尽きて昭和初期の下関まで書けなかったのが残念ですが、土地の方々は今でもはるばる訪ねて見え、物産を送ったりして下さいます。そのほか数限りないご好意を賜わる皆様、またこの本を出版して下さる光風社書店のご一同と、郡司正勝先生、早大演劇博物館の菊地明様、巣鴨図書館の中村千代子様、前村松夫様、古川時雄様、望月百合子様に深謝いたします。
(尚、この本の筆記は次女の生緒が致しました。)
(「あとがき」より)
目次
- 生い立ち
- 古着屋のおしいちゃん
- 神の家
- 駿台英和女学校
- 二度目の蠣殻町
- 実践女学校
- 甲津学舎と日本医学校
- 東京女医学校
- 父の結婚
- 実験・診察・そのほか
- くらしのいろいろ
- 明治の風俗
- 久子の君
- 中山彩畝のこと
- 家出
- 二条丸太町
- 父の破産
- 保護監察
- 河内の春
- 出発まで
- 水野葉舟
- 女子文壇社
- 「うきよ」
- 結 婚
- 「処女」
- 四月馬鹿
- 読売入社
- 「ニコニコ」と「団欒」
- 浩一路と友だちについて
- 瓦解
- お帳場日記
- 長女誕生
- 家財蒸発
- 亭々生作「秋の夜話」
- 原稿生活
- 中外商業新報
- 関東大震災
- 震災拾遺
あとがき