1960年12月、ながれ発行所から刊行されたアンソロジー詩集。編集はアンソロジー刊行委員会。代表は安好匠。
<ながれの会>創立10周年を記念して”大阪サークル詩集”を世に送る。多くの人たちの無明の支援によって一冊のアンソロジーが出版されるこの状況をなんとしても大切にしなければならない。
ぼくは終始一貫の仕事に携わって、云い知れぬ不備不満はあるが、いつの日か又、編纂され「関西諸詩誌の動向」も加筆訂正されることに依って完璧さをもつことを希っている。
アンソロジーの編纂にあたって、ぼくはぼく独自の芸術的、文学史的、思想的考慮を払って編んだ。多数の作品が収録できなかったことは残念だが、冷酷に戦后のサークル詩運動を直視する勇気を持つ人々にはある種の納得がしていただけると思う。
大阪社会派の詩人たちとは谷川雁の云う大阪的友誼の上になり立っているとみる観方にぼくは一面のムードを感知するけれども、それより小野十三郎の<大阪>への批評の偉大さに基点をおく方がより真実に迫りうると思う。第二にサークル的姿勢とは働く人たちの意識的無意識的欲求を主体的に受けとめた詩人の姿勢の問題であって、社会派とかサークル的姿勢とかを政治主義的な狭義さであげつらう必要はないと思っている。
(「あとがき」より)
目次
- 台風三十八号 井上俊夫
- 貴公子失恋記 石井習
- 弔歌・アジアの底で 大江昭三
- 塔の上で 奥山富江
- 空想交感記 菊地道雄
- 村・他一篇 見満津多子
- 橋の上で 近藤寿一
- 闘鶏・他二篇 榊美代子
- 政治的恥部 清凉信泰
- なぜ狙う 伊達虔
- 夜の駅で・他一篇 出口政子
- 非望と報復の場で 浜田知章
- のうれんあきんど 坂東寿子
- 小鳥をうたに 港野喜代子
- 青春襤褸 福中都生子
- 平和のうた 松本一哉
- 壁の中・他二篇 丸野きせ
- 四十二番目 向井孝
- 抵抗の樹 和田洋子
- ぼくの一九六〇年 森寛
- 俺に逢いたくなつて 森脇はじめ
年表 関西詩誌の動向
あとがき・菊地道雄